官地とは?

 私達の住む富士・富士宮市は、全国的にも「官地」が多いってご存知でしょうか?

 上の写真で、青いテープは建物の配置を示すためにこちらで張ったのですが、
左の一段高い敷地との間、見切りコンクリートが切れていますね。

なぜ?

 黄色い部分は何でしょう?ここが「官地」です。

 一つ疑問が。
その「官地」は自分の土地じゃないとすると、その官地と自分の土地との間に、
境界を示す見切りコンクリートがありません。

なぜ?



 本日のお話「官地」。
(あくまで「読み物」として読んで下さい。深くツッコまないでください。)

 

 明治のはじめ、政府は従来の「米による年貢」から「お金による税金」に本格的にシフトするため、土地の測量を命じます。


 当時は、現在のように正確に測れる機械などありませんでしたから、その当時作られた公図は、割と適当だったりします。

 そして、土地の広さによって税金がかけられる、いわゆる固定資産税を考えた時、
自分が使っている田んぼなら当然土地の権利を主張するわけですが、みんなも通るあぜ道とか、川沿いの法面とか、
厳密に誰の土地でもないような部分については、自分の土地としてしまうと税金が高くなるので、
誰も主張しない土地が出てきました。


 そして誰の土地でもないその部分を、お上の土地、としました。
これが、官地です。


 ですから、現在の官地の所収者は「財務省」となります。

 ちなみに、官地以外にも、公図を見ると誰の所有でもない謎の土地、
「赤道」と「水路」があります。


 水路はわかりやすいですね。
今全く水が流れていなくても、昔は水路だったので、公図は青く塗られていました。


 そして昔は、道は赤く塗られていたため、かつて道だった部分を「赤道」と呼びます。

 赤道と水路は基本的には市町村のもので、公共性が高いものですから、不法占拠し続けても、
時効による取得は出来ませんが、財務省の官地には、この「取得時効」があります。

 取得時効とは、民法で定義されていて、善意の場合(法律用語で知らなかったの意味)10年、
悪意の場合(同、知っていたの意味)20年、公然と自分の土地として使っていると自分のものにして良い、というものです。

 もちろん、自動的にそうなるわけではなく、所得時効が成立しているから権利を主張できる、という意味です。
取得時効は、どの土地であっても民法でOKとされています。


 では赤道も水路も、時効取得OK?と思いがちですが、
「公共性の高いものだからダメ!」「どうしてもと言うなら裁判!」となります。

 ですが、官地は時効取得が可能です。

 財務省としては、狭くて小さくて使いみちがない土地を自分の土地にしておくより、
民間に払い下げて固定資産税を取る方が「得」ですから。

 けれど一般的に、官地は前述の通り、田んぼの畦道とかだったりした部分なので、
小さく狭いので誰かが使うとかではなく、隣接するその土地の所有者が、
そのまま普通に使っていることが殆どで、第三者がそこを取りに来たりはしません。

 だから、測量や登記など、わざわざお金を使って払い下げたりせずに(法律用語的には「悪意」で)そのまま使い続けます。


 写真の土地も…

下段のそれぞれの土地の所有者が、なんとなく使い続けるでしょうね。



 最後にもう一つ。

 土地家屋調査士によりますと、富士・富士宮市は、全国的に見てもこの官地がものすごく多い土地なんだそうです。
昔天領(江戸幕府の直轄地)だったことによる説、が強いそうです。

 前述した土地の測量の際、「ここはもともと、誰の土地でもないお上の土地だから」ということで、
そのまま官地になった場所がたくさんあるみたいです。
家を建てる際に、よくこの官地が出てきます。

 誰がどう見ても自分の土地に見えても、公図を見れば、自分の土地ではありませんので、
当然その土地にはみ出して家を建てたり出来ませんし、建ぺい率や容積率に入れることは出来ません。

 測量をして払い下げてもらえば、どちらも可能です。